『アメリカの不良娘・ベッキー 』Vol. 1――運命のヒッチハイカー
フライト訓練の日常と“田舎町”クリアレイク
僕がアメリカで**自家用操縦士(PPL)の免許取得を目指して生活を始めてから、2ヶ月が過ぎていた。
最初の拠点は、サンフランシスコ湾近くのHAYWARD(ヘイワード)という町だったが、今はさらに北のCLEARLAKE PEARCE(クリアレイク・ピアス)**という田舎町に引っ越してきた。
ここは、ナパ・バレーのワイン畑をさらに50マイル北へ進んだ場所で、目の前には広大なクリアレイクが広がっている。
湖畔に広がる町並みはのどかで静かだが、若者にとっては退屈極まりない場所だった。
でも、僕には退屈している暇はなかった。
毎日、朝早くから夜遅くまでフライト訓練と座学、シミュレーションの繰り返し。
「絶対に免許を取る!」
日本を飛び出してきた僕の最大の目標は、アメリカで自家用操縦士の免許を取得すること。
この決意だけが、僕を支えていた。
しかし――
その“平凡な日々”は、ある出会いによって一変することになる。
⛽ フライト後のワゴン旅――いつもの帰り道
フライト訓練を終えた僕たちは、**プリモスのワゴン(中古)**に乗り込んだ。

今日のメンバーはいつもの仲間たち。
運転席には“管制官泣かせ”の斉(せい)さん。
なぜ彼が“管制官泣かせ”なのか――
それは、フライトプランを勝手に変更する天才だからだ。
コントローラーの指示も、計器も、自分の勘で変更する。
(斉さんは、英語が出来ない。良く1人で飛んで行ける物だと、関心から彼の人間性に興味をもった)
それでも、着陸はきっちり決めてしまうから、教官たちは毎回頭を抱えていた。
「今日も無事に終わったな!」
斉さんが運転席でハンドルを握りながら、バックミラー越しに僕たちを見た。
僕は助手席に座り、湖の景色をぼんやり眺めていた。
「今日はトレーラーハウスに戻って、フライトの復習をして、明日の予習か…」
そんなことを考えていた時――
🎯 湖畔の奇跡――2人のヒッチハイカー
「おい、見ろよ!!」
突然、僕の目が“あるもの”を捉えた。
湖畔の道沿いに立つ2人の女の子――ヒッチハイカーだ!
金髪の女の子。
長い髪が陽の光を浴びて黄金色に輝き、タンクトップとショートパンツ姿。
遠くからでもスタイルの良さが一目でわかるほど、抜群のオーラを放っていた。
その隣には――
黒髪の女の子。
いや、正確には“黒に近いダークブラウン”。
クールな雰囲気を漂わせ、サングラス越しの視線がどこか鋭い。
「止まれ、斉さん!!」
⚡ 「止まれ!」――僕の直感が叫んだ
「えっ?なんや?」
斉さんが驚きながらも、反射的にブレーキを踏む。
ギィィッ――!!
タイヤがアスファルトに悲鳴を上げ、僕たちのワゴンは急停止した。
車内にいた仲間たちは、一瞬何が起こったのかわからず、キョトンとしていた。
でも、僕の目は**“彼女たち”**に釘付けだった。
🚗 Uターンと“非日常”の始まり
キュルルッ――
湖畔の細い道で慎重に方向転換するワゴン。サイドミラー越しに見えるのは、僕たちに注目している2人の女の子たちだった。
「斉さん、Uターン、お願いします!」
「ラジャー、あいつらやな。」
斉さんは軽くハンドルを切り、華麗にUターンを決めた。
🕶️ 「どこ行くの?」― ―運命の一言
窓を開けて、声をかけた。
「Where are you goin’ ?(どこ行くの?)」
金髪の彼女が、弾けるような笑顔を見せた。
「CLEARLAKE OAKS(クリアレイク・オークス)!!」
CLEARLAKE OAKS??
僕は一瞬考えたが、そんなことはどうでもよかった。
「斉さん、もう一回Uターン、お願いします!」
「マジで乗せてくれるの?」
彼女たちは顔を見合わせ、驚きと喜びが入り混じった表情を浮かべていた。
💥 ワゴンに乗り込んだ“爆弾”たち
「Hi! どこへ行くんだって?もう一度言ってよ。」
僕がもう一度声をかけると、彼女たちは躊躇なく近づいてきた。
「H~i! CLEARLAKE OAKSよ。この湖の反対側!」
🎉 ベッキーとスター、登場
「ラッキー!!」
最初に乗り込んできたのは、金髪の彼女だった。
「私はベッキー。よろしくね!」
ベッキーは、ジーンズのポケットからガムを取り出しながら、僕にウインクしてきた。
続いて、後部座席に滑り込んだのは――
「私はスターよ。」
ダークブラウンの髪を揺らしながら、サングラスを外して微笑んだ。
スター――その名前からして、ただ者ではない雰囲気を漂わせていた。
🕰️ ワゴン内で繰り広げられる“爆弾会話”
「クリアレイク・オークスまでどのくらいかかる?」
ベッキーが助手席から振り向いて聞いてきた。
「30分くらいかな。でも、この時間だと景色がヤバいんだよ。湖に夕日が映ってさ…」
僕は少し誇らしげに説明した。
「へぇ、じゃあ寄り道してもいい?」
「どこに?」
「絶景ポイントがあるんでしょ?そこ、見てみたいな。」
その笑顔に、僕はもう抗えなかった。
「オッケー。じゃあ、案内するよ。」
🌟 スターの冷静な観察眼
一方、後部座席のスターは、黙って景色を眺めていた。
「スター、静かだね?」
僕が振り向いて声をかけると、彼女はサングラスを指でくるくる回しながら口を開いた。
「うん、様子見。私、あんまり初対面の男は信用しないタイプだから。」
鋭い――!!
「ま、でも今のところは悪くなさそうね。」
そう言って、スターはほんの少しだけ笑みを浮かべた。
🎯 ベッキーの“ノリ”とスターの“冷静さ”
ワゴンの中は、ベッキーのノリの良さと、スターのクールな観察眼のコントラストで妙な緊張感が漂っていた。
「ねぇ、日本人ってみんな真面目なの?それとも、あなたみたいにちょっとヤバイ奴もいるの?」
ベッキーが、軽くからかうように聞いてきた。
「そりゃ、俺みたいなのもいるさ。」
僕は冗談めかして答えた。
「じゃあ、面白い夜になりそうね!」
ベッキーが意味深な笑みを浮かべた瞬間、スターがポツリと呟いた。
「油断しないほうがいいわよ、ベッキー。」
🕰️ ほんの30分の“冒険”のはずが…
本来なら、僕たちはトレーラーハウスに戻って、フライトの復習と明日の予習をする予定だった。
でも―― 斉さんは何も言わずにアクセルを踏んだ。
🎯 僕の3つの目標――ここからすべてが始まった
僕の頭の中には、固く決めていた3つの目標があった。
✅ 自家用操縦士の免許取得
✅ 金髪の彼女を作る
✅ そして…
**「3つ目の目標」**は、まだ誰にも話していない“秘密のミッション”だ。
この出会いが、その目標の“引き金”になるなんて――
この時の僕には、まだ知る由もなかった。
🎬 次回、ベッキーの“とんでもない”正体が明らかに!?
――Vol. 2へ続く!
