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3
Mar

『アメリカの不良娘・ベッキー 』Vol.8――「赤鬼の夢と、生卵かけご飯の朝」――

結局その日は、これからの僕の方向性を見いだせるようなアドバイスを、斉さんから貰うことは出来なかった。 人生の分岐点のような気がしていた。このまま飛び続けるのか。別の道を探すのか。それとも、ただ流されるのか。 そんな問いを胸に抱えて、僕は斉さんの部屋を訪ねたのだ。 けれど――。 斉さんは、ずっと笑っていた。 最初は、僕の話のどこかがおかしいのかと思った。真面目な相談だ。笑う要素はない。むしろ重たい話だ。 「いやぁ〜、ははははは……!」 目を細め、腹を抱え、止まらない。 僕が「今後の進路について」と切り出しても、 「うんうん……はははは……それで? ははは……」 全然、会話にならない。 後から聞いた話だが、あの日ベッキーの家でみんなで“ブッ飛んだ”とき、斉さんはこっそり葉っぱを持ち帰っていたらしい。 そして僕が訪ねていった時、ちょうどそれを独りで楽しんでいる最中だったのだ。 タイミングが悪いというか、運が悪いというか。 真剣な人生相談に来た若者と、絶好調で宇宙を漂っている中年男。 交わるはずがない。 結局、僕は何の答えも得られないまま部屋を後にした。 悶々とした夜 ベッドに横たわっても、眠気はなかなか訪れなかった。 天井を見つめながら、頭の中で同じ問いがループする。 このままでいいのか?自分はどこへ向かっている?今の選択は正しいのか? その不安は、いつの間にか形を持ち、夢の中へと入り込んだ。 赤鬼のような大男。 身の丈は三メートルはあるだろうか。筋肉の塊のような体。黄色く濁った目。牙をむき出しにして、こちらへ向かってくる。 僕は逃げる。 必死に。 足がもつれる。息が上がる。振り返ると、もうすぐ後ろだ。 「やめろ!」 声を出しても届かない。 捕まる。 そして――。 頭から、バリバリと。 骨が砕ける音が聞こえた。 そこで目が覚めた。 汗でびっしょりだった。 朝は来る 時計を見ると、まだ早朝。 今日は午前中にフライトがある。 パイロットにとって、集中力は命だ。空を飛ぶということは、常に冷静であることを求められる。 夢の余韻に引きずられている場合ではない。 何か食べなければ。 キッチンに立ち、炊飯器を開ける。湯気がふわりと立ち上る。 茶碗にご飯を盛る。卵を割る。醤油を少し垂らす。 生卵かけご飯。 日本人にとっては、当たり前の朝の光景だ。 立ったまま、無心でかき込む。 すると、窓の向こうに見慣れた赤いトラックが見えた。 空港のゲートから、こちらへ向かってくる。 あれは――。…
12
Nov

『アメリカの不良娘・ベッキー 』Vol.7――「ラブレターと毛深い男と、夜のトレーラーハウス」――

煙草を買いに出る、ただそれだけのはずだった。 けれど、僕がベッキーに手紙を渡してからの数時間は、まさに「青春の大脱線」だった。金髪のベッキーと二人きりのディナー。ラブレターの手渡し。彼女の“旦那”の存在。そしてその旦那が今、「jail(刑務所)」にいるという衝撃の事実……。 あまりの展開に頭が真っ白になった僕は、「ちょっと煙草を買いに行ってくる」と言ってから2時間、まったく言い訳も思いつかないまま、トレーラーハウスへ車を走らせていた。 言い訳を考えようとすればするほど、頭にこびりついて離れない言葉があった。 「Oh, it’s my husband…」 この一言が脳内リピートされすぎて、思考停止に陥っていた。刑務所って。三人って。なんで笑ってるんだベッキー……。 もうどうにでもなれと思い、「え~い! ままよ!」と車のドアを勢いよく閉め、僕は何食わぬ顔でトレーラーハウスのドアを開けた。 「ただいま~」 ――返事なし。 恐る恐るリビングに入ると、そこには誰の姿もなかった。どうやら、みんな自分の部屋に戻って、それぞれ勉強に励んでいるらしい。そう、僕以外は全員「真面目な訓練生」なのだ。 (しまった……俺だけ明らかに浮いてる……) さすがにこのまま眠りにつくのは無理だと思い、僕は“あの人”のドアをノックした。 「お~、どうぞ~」 ドアの向こうから聞こえてきたその声は、どこか安心させてくれるトーンだった。斉(さい)さん――僕が勝手に“精神的な兄貴”だと思っている、頼れる人だ。 「お~、ボンか。どうした?」 と、笑顔で迎えてくれた斉さんの表情に、僕の肩の力がふっと抜けた。 この斉さん、新宿の歌舞伎町でスナックを2軒も経営していたという経歴の持ち主。沖縄出身で、裸一貫で東京に上京し、苦労の末に成功を掴んだ男である。 どこか野生味があり、頼れる雰囲気。冒険好きで、面倒見も良くて、何より絶対に怒らない。そして――ちょっと毛深い。 そんな斉さんには、いつも僕の無謀な話を聞いてもらっていた。 「……実はね」 僕は、今夜の出来事を一つひとつ丁寧に話した。インポの坪井さんの“あの話”から始まり、ベッキーの部屋でのラブレター事件、そして彼女の旦那が“婦女暴行で3人やっちゃって今服役中”という衝撃的なオチまで――全部、包み隠さず。 話している途中、斉さんは最初は「ふむふむ」と頷いていたが、途中からお腹を抱えて笑い始めた。 「ひっひっひっ……」「かっかっかっ……」 まるで壊れたエンジンのような笑い声。 いや、こっちは真剣なんですよ! 命がけだったんですよ! ベッキーの旦那に殺されるかもしれなかったんですよ! ……それを、あんた……! 「いやぁ~、ボン、おまえ最高だわ。まじ、映画かドラマかって話だよ、これは!」 くぅ……でも、この笑顔に救われる。悔しいけど、なんかホッとしてしまうのが悔しい。 そして斉さんは、また笑いながら言った。 「でもよ~、ボン。おまえはちゃんと“目上の男”を立ててあげたんだから、立派だよ。感心感心。」 「なにせ、インポの坪井さんを“立てて”あげたんだからよ。はははっ、感謝されるんじゃねぇの?インポ感激~ってな!」 「けっけっけっけっ!」 ……。 あぁ、この人、根が悪い(笑) でも不思議と、僕の中のモヤモヤはすっかり消えていた。 笑われたけど、バカにされた気はしなかった。 むしろ、この話を笑ってくれる人がいるってことに、救われていた。たぶん、誰かに「大丈夫だったな」って言って欲しかったんだ。 ラブレターのことも、ベッキーのことも、全部が全部、思い通りに行ったわけじゃない。でも――そんな夜も、悪くないと思えたのは、斉さんの“毛深い笑顔”のおかげだった。 気がつくと、もう夜中。 斉さんの部屋を出て、廊下に立つと、外からはトレーラーハウス特有の風の音が聞こえてきた。 アメリカの片田舎。 何もない場所。だけど、ここで僕は一つ、青春の爆発をやらかした。 そしてその証人は――毛深くて、笑い上戸の、歌舞伎町の元スナックオーナーだった。 続く。
12
Nov

『アメリカの不良娘・ベッキー 』Vol.6――「旦那が帰ってこない理由が“まさか”すぎた夜」――

「What’s happening?(どうしたの?)」 ベッキーのそのひと言で、僕は現実に引き戻された。 ……いや、どうしたのって、お前、どうして平然としてるんだよ!?心臓はさっきからバクバク音を立ててるし、頭の中は真っ白。なぜって? さっき見たんだよ、君と一緒に写ってる“あの大男”の写真を。 で、思わず聞いちゃったんだよ。 「What time is your husband coming back?(旦那って、いつ帰ってくるんだ?)」 もう、緊張で口が乾いて、舌が動かない。英作文どころじゃない。 でも、どうしても確かめたかった。今すぐ彼が帰ってきたら――僕の命、ないかもしれない。 すると、ベッキーは料理の手を止めて、軽く笑いながら言った。 「He is not coming back today. He is in jail right now.」 ……え? なんて? ジェイル?……ジェイル?? その単語の意味が咄嗟に出てこなかった僕は、いつものクセでジーパンのポケットから三省堂の小型英和辞典を取り出した。 「How do you spell ‘Jail’?(ジェイルって、どう綴るの?)」 このフレーズは本当に便利。とっさの時はまずスペルを聞いて、辞書を引く。それが僕の英語サバイバル術だ。 めくる。指を走らせる。見つけた。 【jail】…刑務所、拘置所、留置場。 ……は????????? 刑務所ぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?!?!?!? 「え?え?えええええ!?」 思わず声が裏返る。ベッキーはいたって冷静。 僕:「What did he do?(なにをやらかしたの!?)」 ベッキー:「Rape. He…
12
Nov

『アメリカの不良娘・ベッキー』 Vol. 5――“煙草買いに行く”が人生最大の冒険になるなんて――

「ちょっと煙草、買いに行ってくる」 そう言って軽く手を振り、僕は仲間たちの前から姿を消した。もちろん、煙草なんか買うつもりはない。ただの口実だ。本当の目的は、金髪のあの娘――ベッキーの元へ行くこと。 心臓がバクバクする。なにせ、手には一通の手紙。何度も何度も書き直し、何度も何度も読み返し、やっと完成した僕の“告白”の手紙だ。 運転しながら、頭の中では無限ループで再生されるたった一言のフレーズ。 「Hi, Becky. Please read this.」 それだけの一言が、まるで映画のセリフのように重く感じる。ボガード風に言えば、「ヨ~!ベッキーちゃんよ、こいつを読んどいてくんな」ってやつか?……いやいや、そんな昭和の任侠風に行っても通じない。 でも、格好をつけたい気持ちと、臆病な自分の葛藤が車内で激しくぶつかり合っていた。 40分ほど車を走らせ、ついにベッキーのアパートに到着。駐車場には見慣れた彼女の車――。 「……いる」 たったそれだけで、僕の心臓は一気に高鳴った。バックビートの効いたジャズよりも早く、僕の胸をドクドクと打ち鳴らす。 深呼吸ひとつ。腹を決めてノック、2回。 「Who is it?(だ〜れ?)」 「It’s Bon.(ボンだよ)」 “Bon”というのは、例の先輩・坪井さんがつけたあだ名。たしかに僕は、どこか甘ったれた“ボンボン”っぽさが抜けきれてなかったかもしれない。 ドアの向こうから「Come inside.(入って)」という声がして、いざ中へ。 ベッキーはキッチンにいて、何やら夕食の支度をしていた。コンロの上にはマッシュド・ポテト。湯気の向こうに映る彼女の姿は、まるでアメリカ映画のワンシーンのようで――僕はすっかり見とれていた。 「What’s happening?(どうしたの?)」 その言葉に、僕はついに決意の一言を口にする。 「P-P-P-Please read this…」 あれだけ練習したのに、いざ本番ではしっかりどもる。口から出たのはお経みたいな断片的な英語だった。 「What is that?」 「Love letter…」 し、しまった!!!心の中でしか思ってなかった言葉が、つい口から漏れてしまった。いや、“Love letter”って、直訳すぎるでしょ…! でもベッキーは、そんな僕の慌てっぷりを微笑みながら受け入れてくれた。手紙をそっと受け取り、静かに読み始める。 僕の鼓動はもはや限界を超え、気を失いそうになっていた。 「Any time」 読み終えた彼女が見せた笑顔。その上目遣いに、僕の脳内では何かが完全に溶けた。 「OK?」と確認する僕に、「Sure」と、軽く返すベッキー。 その直後、まさかの展開。 「Why don’t you having dinner…
12
Nov

『アメリカの不良娘・ベッキー 』Vol. 4 ――ボーリングとピザとビールの夜―インポ先輩への義理を果たし、俺は恋と英作文の地獄へ突入した――

※この記事は、第一話「アメリカの不良娘・ベッキー Vol.1」、第二話「禁断の“3つ目の目標”」、第三話「天国への階段と、ぶっ飛んだ夜と、僕の決意」の続編です。 ベッキーと坪井先輩が帰ってきたのは、午後10時を少し回った頃だった。 僕らはトレーラーハウスのリビングに集まり、テレビをぼんやり眺めながら時間を潰していた。さっきまでベッキーのアパートで体験したあの不思議な空気感と、夜の静けさがまだ心に残っていて、どこか浮ついたような沈黙が部屋を支配していた。 外から車のヘッドライトが差し込むと同時に、ベッキーの笑い声が聞こえてきた。その声は乾いていて、よく通って、そして少し酔っていた。 ドアが開く。 「Hey guys! We had sooo much fun!」 ブーツのまま飛び込んでくるような勢いで部屋に入ってきたベッキーは、髪をふわりと払ってから片手を上げた。彼女はそのままリビング中央のクッションにどかっと座り、頭を後ろにあずけて大きく伸びをした。 「斉さん!コーラある?」 「あ、あるで」 斉さんがクーラーボックスから缶を取り出し、無言で差し出す。その横顔には、何とも言えない曖昧な笑みが浮かんでいた。 健はソファで体育座りしながら、翌日の訓練の予習のために広げた航空地図を眺めていたが、目だけはしっかりとベッキーを見ていた。 少し遅れて、坪井先輩が入ってきた。 シャツの前ボタンを外し、なんとなく肩をすくめている。 「……おつかれっす」 僕は、先輩の様子を見ながら、ぐるぐると考え続けていた。 やったのか? いや、でも、あの先輩の顔……どこか違和感がある。 部屋の空気が少し落ち着いたのを見計らって、僕は坪井先輩の隣にそっと腰を下ろし、小声で尋ねた。 「先輩……今日、どうでした?」 先輩は缶ビールを一口飲んで、肩を落とすように笑った。 「ボーリング行ってな。そのあとピザ食って、ちょっとベッキーがビール飲みたいって言うから一杯だけつきあって、んで帰ってきた」 「……それだけ、ですか?」 「うん、それだけ」 その言葉を聞いた瞬間、心の中で何かが跳ね上がった。 『よっしゃあああああ!』 先輩が何もしていないということが、こんなにも喜ばしいことなのかと、自分でも呆れるほどだった。 「そ、そうですか!あ、あはは、じゃあ次は僕の番、ですね!」 思わず口から出た言葉。 先輩は苦笑いしながら、「がんばれや」とだけ言って、またビールをあおった。 健が遠くから「うっわ、わっかりやす〜」と笑っていたが、もう気にしていられなかった。 その夜、ベッキーはリビングの片隅に置いてあった古びたラジカセを見つけて、どこからか持ってきたカセットテープを差し込んだ。 『Stairway to Heaven』ではなかった。もっとアップテンポなロックだった。でも、音が鳴った瞬間、僕の中であの夜の情景がよみがえった。 煙、光、ギター、汗、そして、あの匂い。 ベッキーはソファの前のカーペットの上で軽くステップを踏みながら、缶コーラを片手に振り返り、にっこり笑った。 「ねえ、誰か踊らないの?」 だけど僕は、それどころじゃなかった。 心の中は、完全に“次の一手”のことで埋め尽くされていた。 『どうやってベッキーにアプローチすればいい?』 普通に誘っても、あの軽快なノリに飲まれるだけな気がした。 何か……もっと印象に残るもの。 「う〜〜〜〜ん」…
12
Nov

『アメリカの不良娘・ベッキー 』Vol. 3ーー天国への階段と、ぶっ飛んだ夜と、僕の決意

※この記事は、第一話「アメリカの不良娘・ベッキー Vol.1」、 第二話「禁断の“3つ目の目標”」の続編です。 この第三話では、前回の“マリファナの一服”のその後、レコードに針を落とした瞬間から始まる、まるで夢のような、あるいは夢を超えたような夜の続き――そして、その余韻が残る帰り道に生まれた、ちっぽけで真剣な僕の決意について語ります。 音楽に酔い、煙に揺れ、人の言葉に揺さぶられた一夜が、静かに、でも確かに僕という人間を変えていきました。 そして、それは単なる“アメリカの体験談”ではなく、僕という存在が世界の中でどうありたいか、その最初の小さな選択の記録でもあったのだと、今になって思います。 斉さんの運転する車の助手席に座っていた僕の目の前で、彼女は親指を立てて道路脇に立っていた。 ベッキー――あの金髪の、そして少しばかりワルそうなアメリカ娘。 ヒッチハイクで拾った彼女を、僕たちはアパートまで送り届けた。 その道すがら、助手席に乗っていた僕とベッキーは時折目を合わせては、軽口を交わした。 健は後部座席で興味津々な様子だったが、口には出さずニヤニヤとこちらの様子を観察している。 ベッキーが僕らをアパートの敷地内で降ろそうとしたとき、彼女はふいに振り返って言った。 「You guys can chill for a bit, right?」 ――「ちょっと寄ってく?少しリラックスしていけば?」 その一言で、全てが決まった。 僕らは顔を見合わせてうなずいた。 ベッキーの部屋と“音の魔法” ベッキーの部屋は、典型的な学生向けアパートの一室だった。 古びた階段をのぼってドアをくぐると、ふわりと香る煙草とも香水ともつかない独特の香り。壁にはジミ・ヘンドリックスやピンク・フロイドのポスターが貼られ、レコードが山のように積み重なっていた。 「This is what I call music. You ready?」 ――「これが“本物の音楽”ってやつよ。準備はいい?」 彼女はそう言って、レッド・ツェッペリンの『Stairway to Heaven』のレコードをプレイヤーにそっと置いた。 針が盤に触れる。 ザラッとした静電気混じりの音のあと、静かなアルペジオが部屋に満ちていく。 斉さんもそのまま一緒に部屋へ入り、ソファに腰を下ろした。 僕と健、斉さん、そしてベッキー。部屋にいたのは四人だった。 ベッキーは照明を落とし、間接照明だけに切り替える。部屋は一気に柔らかい光に包まれ、音と空気と色がすべて一体化したようだった。 「すげぇ……」 健がつぶやく。 僕はソファのクッションに身体を預けながら、あまりの音の臨場感に全身が震えるようだった。 緑の煙と、異次元への階段 やがて、ベッキーが低いテーブルの引き出しからガラスパイプとライターを取り出す。 「Want to…
12
Nov

『アメリカの不良娘・ベッキー 』Vol. 2――禁断の“3つ目の目標”

🌊 絶景ポイントでの“危険な”寄り道 ベッキーとスターを乗せた僕たちのワゴンは、CLEARLAKE OAKSへ向かう途中、湖沿いの細い道を走っていた。 「もうすぐよ、あそこのカーブを曲がったら――」 助手席のベッキーが、景色を楽しむように窓の外を指差す。 「ほら、見えたでしょ?」 カーブを抜けた瞬間、目の前には息をのむような景色が広がった。 夕日に照らされたクリアレイクの水面は、鏡のように空の色を映し出していた。湖の向こう岸に見える山々は、オレンジと紫のグラデーションに染まり、まるで絵画のようだった。 🎯 3つ目の目標――解禁 でも――僕の頭の中は、違うことでいっぱいだった。 “3つ目の目標”が、もうすぐ叶いそうな予感がしたからだ。 ✅ 免許取得✅ 金髪の彼女を作るそして―― 3つ目の目標 それは…… 「マリファナを経験すること。」 当時のカリフォルニアは、1980年代。マリファナはもちろん違法だった。 だけど―― **カリフォルニアの“ヒッピー文化”**の余韻がまだ色濃く残っていたこの時代、マリファナはどこでも手に入った。 僕は、このアメリカ滞在中に**“禁断の体験”**をしてみたいと、密かに思っていたのだ。 「もしかして…ベッキーなら…?」 そんな思いが頭をよぎった時だった。 💡 車内の“怪しい”会話 「ねえ、ベッキー。」 僕は、さりげなく声をかけた。 「ん?」 ベッキーが振り返る。 「Marijuana… do you have it?(マリファナ、持ってる?)」 一瞬、時が止まった―― スターがサングラス越しに、じっと僕を見つめる。その視線は、「コイツ…いよいよ踏み込んだな?」と言わんばかりだった。 でも、ベッキーは驚きもせず―― 😏 「持ってるよ」――ベッキーの笑顔 「Yeah, do you wanna smoke?(うん、吸う?)」 来た――!! 僕の心臓は一気に跳ね上がった。 「やろう、やろう!」 日本語で思わず口をついた。でも、ベッキーには僕の“ワクワク感”が伝わったようだ。 「いいわよ。じゃあ、アパート寄ってく?」 「Yes!!」…
12
Nov

『アメリカの不良娘・ベッキー 』Vol. 1――運命のヒッチハイカー

フライト訓練の日常と“田舎町”クリアレイク 僕がアメリカで**自家用操縦士(PPL)の免許取得を目指して生活を始めてから、2ヶ月が過ぎていた。最初の拠点は、サンフランシスコ湾近くのHAYWARD(ヘイワード)という町だったが、今はさらに北のCLEARLAKE PEARCE(クリアレイク・ピアス)**という田舎町に引っ越してきた。 ここは、ナパ・バレーのワイン畑をさらに50マイル北へ進んだ場所で、目の前には広大なクリアレイクが広がっている。湖畔に広がる町並みはのどかで静かだが、若者にとっては退屈極まりない場所だった。 でも、僕には退屈している暇はなかった。 毎日、朝早くから夜遅くまでフライト訓練と座学、シミュレーションの繰り返し。 「絶対に免許を取る!」 日本を飛び出してきた僕の最大の目標は、アメリカで自家用操縦士の免許を取得すること。この決意だけが、僕を支えていた。 しかし―― その“平凡な日々”は、ある出会いによって一変することになる。 ⛽ フライト後のワゴン旅――いつもの帰り道 フライト訓練を終えた僕たちは、**プリモスのワゴン(中古)**に乗り込んだ。 今日のメンバーはいつもの仲間たち。 運転席には“管制官泣かせ”の斉(せい)さん。 なぜ彼が“管制官泣かせ”なのか―― それは、フライトプランを勝手に変更する天才だからだ。コントローラーの指示も、計器も、自分の勘で変更する。(斉さんは、英語が出来ない。良く1人で飛んで行ける物だと、関心から彼の人間性に興味をもった) それでも、着陸はきっちり決めてしまうから、教官たちは毎回頭を抱えていた。 「今日も無事に終わったな!」 斉さんが運転席でハンドルを握りながら、バックミラー越しに僕たちを見た。 僕は助手席に座り、湖の景色をぼんやり眺めていた。 「今日はトレーラーハウスに戻って、フライトの復習をして、明日の予習か…」 そんなことを考えていた時―― 🎯 湖畔の奇跡――2人のヒッチハイカー 「おい、見ろよ!!」 突然、僕の目が“あるもの”を捉えた。 湖畔の道沿いに立つ2人の女の子――ヒッチハイカーだ! 金髪の女の子。長い髪が陽の光を浴びて黄金色に輝き、タンクトップとショートパンツ姿。遠くからでもスタイルの良さが一目でわかるほど、抜群のオーラを放っていた。 その隣には―― 黒髪の女の子。いや、正確には“黒に近いダークブラウン”。クールな雰囲気を漂わせ、サングラス越しの視線がどこか鋭い。 「止まれ、斉さん!!」 ⚡ 「止まれ!」――僕の直感が叫んだ 「えっ?なんや?」 斉さんが驚きながらも、反射的にブレーキを踏む。 ギィィッ――!! タイヤがアスファルトに悲鳴を上げ、僕たちのワゴンは急停止した。車内にいた仲間たちは、一瞬何が起こったのかわからず、キョトンとしていた。 でも、僕の目は**“彼女たち”**に釘付けだった。 🚗 Uターンと“非日常”の始まり キュルルッ―― 湖畔の細い道で慎重に方向転換するワゴン。サイドミラー越しに見えるのは、僕たちに注目している2人の女の子たちだった。「斉さん、Uターン、お願いします!」「ラジャー、あいつらやな。」 斉さんは軽くハンドルを切り、華麗にUターンを決めた。 🕶️ 「どこ行くの?」― ―運命の一言 窓を開けて、声をかけた。 「Where are you…

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